SLIPKNOT/SLIPKNOT

92pt:Final form in 90’s and signpost in 00’s

今ではYoutubeやSpotifyがあるのでこういう事はないと思うが、メタラーを公言していると洋楽ロック全般に詳しいと思われ、ややもすると範囲外の音楽に対して質問されることがあった。

自分がヘヴィメタルを聴き始めた90年代後半というのは、日本ではFAIR WARNING、ROYAL HUNT等のBig in Japan勢やHELLOWEEN、STRATOVARIUS等のメロパワ勢が人気であり、メロディックデスメタルの隆盛もあって、自然と自分の指向もメロディアスな音楽が好みとなっていった。

一方でアメリカではオルタナティブロック(この言葉ズルいなー。パンクもグランジもハードコアも含まれるなら、それはもはや主流ですやん。)が猛威を振るっていた時代である。そんな中で「マリリンマンソンってどんなん?」とか「リンプビズキットって知ってる?」と、覚えたての単語を自信満々にぶつけてくるのである。
たまったものではない。

そんな憎らしい存在だったオルタナ勢の中でもダントツでカッコいいと思えたのが今回取り上げるSLIPKNOTの1stアルバムである。初聴時の衝撃たるや半端なかったし、モダンへヴィネスやらラップやら、挙句の果てにはデスラッシュまでぶち込んだ音楽性はまさしく「ミクスチャー」と呼ぶに相応しいものであった。90年代最後にリリースされたこの1stこそが90年代ヘヴィロックの最終形であり、この先無数のフォロワーを生み出していくこととなったのである。

当時の所謂ヘヴィロックはへヴィネス側にかなり傾倒しており、縦ノリのナンバーというのはそれほどなかった。しかしSLIPKNOTの1stは縦ノリのナンバーが半数以上を占め,これにグロウルはもちろんクリーントーンもこなす#8:Corey Taylor(Vo)のボーカルが乗ることで、非常に刺激的なサウンドが形成されたのである。

序曲M1:742617000027での不穏なノイズで期待と恐怖感を演出しつつ、その後間髪入れずに来るM2:(Sic)では#1:Joey Jordison(Dr)の高速ツーバス連打が炸裂する。とにかく手数の多いJoeyのドラムが全編において目立つのだが、そこに違和感ともいえるスクラッチや電子音が乗ることで枠に当てはまらない多様性を与えている。この無軌道かつ雑多な音像こそ彼らの最大の魅力である。

それでいてキャッチーなのがこのバンドの特筆すべき点である。M4:Wait And BleedやM6:Spit It Out辺りは数回聴けば口ずさめるほどのキャッチーだ。へヴィネスとキャッチーを両立できたバンドなんて一握りだし、それを1stアルバムでやってのけただけでもこのバンドの傑出度がわかるのではないかと思う。

前半6曲はライブの定番曲ということもあり、どうしても印象に残りやすいが後半の曲もなかなかのもの。M9:LiberateやM11:No Lifeといったノリの良い曲もそうだが、初期ならではヘヴィ&ダークなM14:Scissorsなど聴きどころは十分。

極めつけはボーナストラックのM15:Get Thisと隠しトラックのM18:Eeyore。前者はデスラッシュ風、後者はグラインドコア風となぜ本編に入れなかったと言わざるを得ない名曲2発。引き出しが多すぎる!

こんな全方位的なアルバムを引っ提げてデビューしたのだから、その後の活躍はある意味当然だったのだろう。今でこそだいぶ丸くなったとになったが、たまにはこの頃の憎悪剥き出しのサウンドを現代のティーンにぶつけてほしいものである。もちろん20年前ティーンだった我々オッサン達にも。

Songs Rating
1 742617000027 ★
2 (Sic) ★★★★
3 Eyeless ★★★
4 Wait And Bleed ★★★
5 Surfacing ★★
6 Spit It Out ★★★
7 Tattered & Torn ★
8 Me Inside ★★
9 Liberate ★★
10 Prosthetics ★
11 No Life ★★
12 Diluted ★★
13 Only One ★
14 Scissors ★
15 Get This ★★★
16 Interloper (Demo) ★
17 Despise (Demo) ★
18 Eeyore (The Hidden Track) ★★★

ちなみに私が持ってるのはPurityがない再発盤です。ヘヴィなナンバーで評価するなら★1つですかね。
Frail Limb NurseryはPurityの前曲的な位置づけです。