IN PROGRESS/WORK OF ART
89pt:High quality melodies with hard sound
今回は1stアルバム「ARTWORK」でメロディックロックファンに衝撃を与えたWORK OF ARTの2ndアルバム「IN PROGRESS」である。
1stアルバムはTOTOを始めとしたメロディックロック界の偉人たちの影響を隠すことなく散りばめた名作だったが、所謂AORが基軸であるのも影響してか手放しで絶賛されていたわけではなかった。その後、Robert Sall(Gt)はW.E.T.、Lars Safsund(Vo)はLIONVILLEと各々サイドプロジェクトを経た後にリリースされたのが、この「IN PROGRESS」である。
1曲目のM1「The Rain」から1stと何ら変わらぬ磨き上げられたメロディーを奏でてくれる辺りは流石の一言。ずばり名曲。1stとは異なるベースが主張するサウンドはハードロックらしくエッジが効いており、特にアップテンポのナンバーではドライブ感を与えノリの良さを感じる。続くM2「Nature Of The Game」では1stからのファンの心もしっかり掴んでくれるキラキラしたキーボードが印象的なメロディックロック。1~2曲目の流れは1st~4thの中で最もクオリティが高く、序盤としての掴みは上々。
M3「Once Again」は柔らかい響きのメロウなナンバー。TOTOっぽさもある曲だが北欧の透明感のあるメロディーを聴かせてくれるところはこのバンドならでは。M4「Never Love Again」はJOURNEYにありそうな爽やかハードロックチューン。もう少しサビが突き抜けてくれるともっと良かったが、贅沢な注文か。M5「Eye Of The Storm」はWORK OF ART節ともいえる低音を響かせたギターにキラキラシンセで彩ったミドルポップ。歌メロよりもキーボードを追ってしまいがちなので主張しすぎかも。個人的には好きなんだけどね。
スローなM6「Until You Believe」を挟み、後半戦はリーダートラックであるM7「The Great Fall」から。1stの「Why Do I」を想起させるイントロから始まるメロハー色の強い楽曲。キーボードリフや歌メロがキャッチーでとても心地良い。またこの位置に配置されることでもう一度リスナーの耳を惹きつけ後半に繋げていく点は、アルバムの構成を良く練っていることが伺える。
M8「Call On Me」は爽快なハードポップ。でも聴きどころは切ないメロディーのブリッジだったりする。M9「Emelie」はこのバンドには珍しい疾走感のあるハードロック。この曲は何故かメイン奏者ではないベーシストが弾いている。M1やM7のメイン曲を担当しているベーシストのほうが合っていると思うのだが。
M10「Fall Down」はウエストコーストの夕日が似合いそう(何言っているんだ)なピアノアレンジの効いたAOR。3rdアルバム「FRAMEWORK」のレビューでも書いたが、HR/HM側ではなくシティポップやAORが好きなリスナーの耳にも届いてほしい。M11「Castaway」はブルージーなテイストと思いきやコーラスでの切ないメロディが秀逸。これはこれでいいが、コーラスのメロディを軸にハードポップ調で作り直してほしいほど。でもそれをやるとHAREM SCAREMっぽくなりそう。
ラストのM12「One Step Away」は期待感高まるイントロだが、らしからぬ凡庸なメロディーで聴後の印象はイマイチ。ボーナストラックはM10のアコースティックVer.でよく出来ているがメロディーの際立つ楽曲ではないため、これ目当てに国内盤を買うほどではない。
今作は完全にメロハーと言える仕上がりのアルバムであり、メロディーも大事だけどロックしてなきゃダメだよという諸氏には2ndアルバムのほうが向いていると思う。メロディーの質も随一だが、個人的にサビメロで突き抜けない曲が幾つかあるためその印象が強く、初期3部作の中ではやや評価の下がるアルバムである。
Songs Rating
1 The Rain ★★★★
2 Nature Of The Game ★★★
3 Once Again ★★
4 Never Love Again ★★
5 Eye Of The Storm ★★
6 Until You Believe ★
7 The Great Fall ★★★★
8 Call On Me ★★
9 Emelie ★★
10 Fall Down ★★
11 Castaway ★★
12 One Step Way ★
13 Fall Down (Acoustic Version) ★