FRAMEWORK/WORK OF ART

10月 11, 2020

91pt:My Best AOR Album of the 2010s

社会人になって以降から音楽の嗜好が徐々に変化し、ここ数年はメロディアスハードロックを聴く回数がずいぶん増えたと感じる。刺激を求めなくなったという言い方もできるが、本質的にはメロディアスなものが好きなのだろう。またYoutubeなどの発達により取捨選択が以前より容易になったことも影響しているのかもしれない。思えば中古盤ですら外れを引く機会が少なくなった。昔は適当に安いCDをブックオフでジャケ買いしてよく外したものである、John Norumの3rdとか。

というわけで(どんな訳だ)メロハー界の失敗しない男、Robert Sall(Gt)率いるWORK OF ARTの3rdである。

前回4thについてレビューしたが、4thまでのアルバムを順位付けするならば、3rd≧1st>2nd>>4thである。初期3作は人によって順位は変動すると思う。よりハードなものが好きならば1stと2ndの評価が逆転するだろうし、1stの2ndの折衷的な3rdを中途半端とするならば、評価は下がる。個人的には曲のクオリティは2ndが一番高いとは思うが音像が好みではないのが惜しい。ハードロック的ではないポップス寄りのサウンドのほうがこのバンドの世界観が表現できると思うのだが。

さて、3rdアルバムに話を戻すが、上述したように1stと2ndの中間のようなアルバムであり、その点では3部作の最終作にふさわしい内容と言える。基本線としては何も変わらないので前作、前々作が気に入っているならば外さないだろう。

このバンドらしいアーバンな香りを漂わせたM1「Time To Let Go」で幕を開け、北欧色の強いメロハーのM2「How Will I Know」が続く。ムーディーなミドルのM3「Shout Till You Wake Up」で落ち着きをみせると思いきや今回のリーダートラックである名曲M4「Can’t Let Go」が炸裂する。

これこそ1stと2ndそれぞれのリーダートラックのいいとこどりといった感じで、誤解を恐れずに言うならば「Why Do I」の音・アレンジで「The Great Fall」を演奏しているといった趣である。サビのフックも際立っており、インスト部分も構成がしっかりしており魅力的。自分が知る範囲では2010年代メロハー・AORのベストトラックである。

この後もM6「Over The Line」、M7「The Machine」、M9「Natalie」といったフックの効いた佳曲が要所に配され、ややもすると聴き流してしまう所をきっちり締めてくれる。メロハーというジャンルは特に聴き流しがちになるため、聴き手の意識を戻してくれるアルバムは名盤だなと感じる。

切れのあるイントロのリフが印象的なM7やサビが印象的なM9はアップテンポなナンバーであるため耳に残りやすいが、M6のようなミドルテンポかつギターも抑えられた楽曲でもメロディのみで惹きつけることができるのはこのバンドの奥深さを感じることができる。SURVIVORの「Broken Promises」のような、地味だけど味わいのある曲である。

AOR系のアルバムは最後に後を引くことなくアルバムを締めることが多いと感じるが、このアルバムも同様に浮遊感のあるM11「My Waking Dream」で最後を締めている。ボーナストラックのM12「On The Edge Of Time」はギターが前面に出た本編よりもややハードなナンバー。決して蛇足にはなっていない良い曲。

昨今シティポップが流行しているという話を聴くが、このアルバムは適度なハードさを持ったシティ”ハード”ポップと言っても差し支えないものであり、日本の過去のシティポップを掘り下げる前にWORK OF ARTのような現代のAORにも目を向けてもらえればな、と思いたくなる一作。2010年代ではベスト。

Songs Rating
1 Time To Let Go ★★★
2 How Will I Know ★★
3 Shout Till You Wake Up ★
4 Can’t Let Go ★★★★★
5 How Do You Sleep At Night ★★
6 Over The Line ★★★
7 The Machine ★★★
8 Hold On To Love ★★
9 Natalie ★★★
10 The Turning Point ★★
11 My Waking Dream ★
12 On The Edge Of Time ★★